2013年秋 ロンドン・ウエストエンド演劇最新情報

 9月というのにロンドンはすっかり気温が下がり、道には枯れ葉が舞って日本より早く秋も深まった感じです。
 現在のロンドン、ウエストエンドで上演されているいくつかの人気作品を簡単にご紹介したいと思います。



 ベテランの英女優ヴァネッサ・レッドグレイヴ(76歳)と演技派俳優ジェームズ・アール・ジョーンズ(82歳)主演のシェイクスピア『から騒ぎ』が、シェイクスピア役者のマーク・ライアンス演出で上演され、話題となっています。
 恋に落ちて結婚することになる若い二人を、このベテラン俳優がみごとに演じています。高齢化の時代のせいか、とくに不自然でもなく、なるほどと納得させられます。
 いくつになってもいたずらっぽい目つきで動きまわるレッドグレイヴの魅力は、若い時と同様で観客を楽しませています。


 映画界でも活躍するサイモン・キャロウが
『ワーグナーの頭の中で』をロイヤル・オペラハウスの小劇場で上演中です。
 ドイツロマン派の巨匠リヒヤルト・ワーグナーは偉大な音楽家であると共に政治亡命や、複数の女性との恋愛遍歴でも有名ですが、キャロウが彼の人生遍歴を語る一人芝居で、舞台には小さなピアノ、城や船の模型が並び、ドラマティックな彼の生涯が語られ観客を魅了しています。


 『ロンドン・ロード』等で知られるルーファス・ノリス演出の
『アーメン・コーナー』はゴスペルを織り交ぜた芝居で、ニューヨーク・ハーレムの教会を舞台に、修道女マーガレットの信仰と苦悩の人生を描くものです。
 主演はおなじみの英女優マリアンヌ・ジャン・バプティスト。ロンドン・コミュニティー・ゴスペルの合唱団の歌声が力強く響き、印象的な舞台となっています。


 アメリカの劇作家オーガスト・ウィルソンのピューリツァー賞受賞作品
『フェンス』がコメディアン兼俳優のレニー・ヘンリー(2009年にオセロで大きな評価を得ている)の主演で上演されています。
 才能ある野球選手だったにもかかわらず、黒人であったために辛酸をなめたトロイとその家族たちの心の葛藤を描き、トロイの死後、家族たちが再会し、彼を理解し、生き方を受け入れる終幕は力強く感動的です。



 『ヒステリア』(テリー・ジョンソン作、演出)では、ナチスの追求を逃れて、ウィーンからロンドンにやってきた82歳の精神分析医ジークムント・フロイトが閑静な住宅街で平和な余生を過ごそうとしますが、そこへ画家サルバドール・ダリが現れてフロイト自身や母の幼児体験、ドイツから連れ出すことのできなかった姉たちへの思い、ナチスの暴力などが、幻想をともなって彼を襲います。深刻な彼の心の葛藤が描かれ、迫力のある上演となっています。


 シェイクスピアの喜劇
『真夏の夜の夢』ではBBCの人気コメディ番組でおなじみのデーヴィッド・ウォリアムスがロバの頭を被って登場する職人ボトム役、妖精女王役はミュージカル『リーガリー・ブロンド』等で人気のシェリダン・スミス。妖精パックの悪戯で、人間や妖精の男女が恋に陥ってしまう混乱ぶりが、スマートな現代服姿で登場してきます。主役二人の人気役者のおかげで、若い観客が多く、チケットは完売状態です。


 シェイクスピアと同時代の劇作家クリストファー・マーロウの
『エドワード二世』がナショナル・シアターで上演されています。彼は同性愛の相手に高い位や権威を与え、対立する宮廷内の人々を処刑する暴君ぶりを見せますが、やがて反対派の人々に暗殺され、終幕ではエドワード三世となった新王が母である妃を含む反対派を処刑し、新しい時代を宣言して終わる14世紀の物語です。
 王権のもろさを示す宮廷の舞台はバラックのように薄い板でできており、一幕途中でこれがすべて解体して倒れ、王権の崩壊を示すみごとな装置となり、陰謀の場面は舞台横のスクリーンの映像で示され、息もつかせぬ迫力ある舞台で、拍手が鳴りやまぬ観客の熱狂ぶりでした。


 イプセンの
『人形の家』では人形のように愛されて大切にされていた若い人妻が、ある日突然自立の道を選んで家を出て行く物語ですが、彼女の住む家の居間、食堂、寝室はすべて白色で統一され、全体を観客が見わたせるようになっています。
 その間をサイモン・ハティ・モラハンのノラが家事に追われて走りまわり、やがて銀行マネージャーの夫(ドミニク・ロワン)の懇願を振り切って、一人で生きる道を選ぶ終幕も納得できるものとなり、興味深い上演となっています。


 ノエル・カワードの
『プライベート・ライブズがベテラン女優アナ・チャンセラーとトビー・ステファンズを迎えて上演されました。離婚した二人が再婚、偶然新婚旅行先のホテルで隣の部屋に宿泊し、ベランダ越しの口げんかから、焼けぼっくりに火がついて駆け落ちとなり、パリのフラットでの口げんかと仲直りとスピーディに展開する演出はみごとで、観客を大いに楽しませました。ジョナサン・ケント演出です。
(ロンドンより、宮芙美子)
 
 

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